2026.7.3
「子ども・若者支援フォーラム~応用行動分析の視点から、環境の整え方と支援のあり方を考える~」を開催しました
2026年6月7日に瓦町フラッグで「子ども・若者フォーラム~応用行動分析の視点から、環境の整え方と支援のあり方を考える~」を開催しました。
●フォーラム開催の背景
「朝になると動けなくなる」「学校や外出先では頑張っているけれど、家に帰ると何もできなくなる」
「集団の中にいるだけで疲れてしまう」「声をかけても動けない。どう関わればいいのか分からない」
子どもや若者の様子を見ながら、どうしてなのだろう、何をしてあげればいいのだろうと悩んでいるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
今回のフォーラムでは、こうした子どもの行動を、本人の性格や意欲の問題だけで考えるのではなく、「その行動はなぜ起きているのか」「どのような環境であれば過ごしやすくなるのか」「どうすれば、その人が持っている力を発揮しやすくなるのか」という視点から考えました。
子どもや若者の困りごとについて考えるとき、私たちはつい、「本人にやる気がないのではないか」「もう少し頑張ればできるのではないか」「性格や特性の問題ではないか」と考えてしまうことがあります。けれど、「学校に行けない」「集団がしんどい」「人と関わることに疲れる」「その場所に来るだけでエネルギーを使い切ってしまう」といった状態の背景には、人との関係、これまでの経験、周囲から求められていること、刺激の多さ、見通しの持ちにくさ、心身の状態など、さまざまな要因が重なり合っています。
当団体の活動でも、子どもや若者が「来られない」「続かない」「話せない」「動き出せない」ように見える場面があります。「この人にとって、今の環境はどのように感じられているのだろう」「どこに負担があるのだろう」「何が変われば、少し動きやすくなるだろう」と考えることを大切にしてきました。
今回のフォーラムでは、その一つの手がかりとして、応用行動分析学(ABA)の考え方を学びました。
本フォーラムでは、NPO法人ADDS共同代表の竹内弓乃さんを講師に迎え、科学的根拠に基づく発達支援の実践から、子どもの行動をどのように理解し、支援につなげていくのかを学びました。また、香川大学医学部准教授の長谷綾子先生をモデレーターに迎え、教育・福祉・医療・地域など、立場を越えて子ども・若者支援のあり方を考える時間を持ちました。
●基調講演 「エビデンスに基づく子どもの行動理解と支援」 竹内弓乃さん
子どもは自分で環境を選べません。そのため、周りの大人がどう環境を作っていくかが大事になってきます。
はじめに、応用行動分析(ABA)とは、人間の行動を科学的に研究し、人間理解・人間生活の様々な課題解決に取り組む学問で、行動の原因を環境と個人の相互作用に求めるものです。
ABAでは行動を①行動前の出来事(きっかけ)→②行動→③行動の後の出来事(結果)の3つに分けて考えます。
泣いて暴れる子を例に考えてみると、
①行動前の出来事:ほしいおもちゃがある
②行動:泣いて暴れる
③行動後の出来事:ほしいおもちゃが手に入る となります。
泣いて暴れるという行動の後に欲しいおもちゃが手に入るということが繰り返されてパターン化されると、子どもは行動と結果を結び付け、泣いて暴れると欲しいおもちゃが手に入るんだ!と考えるようになります。そのため、欲しいおもちゃがあった時にはそれを手に入れるために、いつも泣いて暴れるようになります。
そこで周囲の大人は、問題行動に対して、その行動が起こるきっかけとその行動によって子どもが得られている結果は何かを考える必要があります。きっかけと結果が分かると、子どもがその行動をしなくても結果が得られるようにするという未然の対処ができるようになります。つまり、問題行動をしなくても同様の結果が得られることを学習することで、適切な行動をする回数を増やしていきます。
先の例でいうと、子どもがおもちゃをほしがった時にそのおもちゃを指差ししたり、「~がほしい」と言葉で伝えることでおもちゃが手に入るということを教えて、適切な行動とその結果の経験を何度も繰り返します。そうすることで、おもちゃが欲しいときに、子どもが泣いて暴れることが徐々に減り、代わりに指差しすることが増えていきます。
このように、行動を3つの段階に分けて考えることで、問題行動と環境の関わりを整理して、問題行動が起こらないように未然に防ぐ対処を考えることができるというものが、ABAに基づく発達支援の特徴です。
●パネルディスカッション「子どもの行動をどう理解し、どう支え、どう環境を整えるか」
パネルディスカッションでは、モデレーターとして香川大学医学部臨床心理学科准教授の長谷綾子先生を、パネリストとしてADDS竹内弓乃さんと伊澤絵理子が参加して子どもの行動と環境の関わりについて話をしました。
竹内さんにADDSの日々の現場について伺うと、支援する際に意識していることは、療育の教室が子どもが好きな場所になるようにすることだそうです。まずは来てくれたことを褒めて、なかなか教室に入りたがらず、泣く子には、泣くのが少し落ち着いたタイミングでふーっとシャボン玉を吹いてみるそうです。そうすると、泣いていた子はシャボン玉が気になり、シャボン玉に注目します。そのタイミングを逃さずに、「すごいね。きれいだね。シャボン玉見てくれたの。」と声をかけて注目を示したことを褒めます。このように、始めはその場にいてくれるだけのことを強化することから始めていく、スモールステップの考え方が重要です。また、遊びにサブリミナル的に学びがあるといったような割合で関わることで、子どもがまた来たいと感じ、通い続けてもらえるように心がけているそうです。
子どもにいかに興味をもってもらえるようにできるか、いかに集中できる場を作れるかは、支援者の力です。興味を持ってもらえるような声掛けや道具の置き方など、子どもにとって楽しいと思える環境をつくることが重要だそうです。
また、連携について、共通の課題として連携のハードルの高さと時間・人手不足がありました。連携したいという気持ちはあるけれど、それに費やす時間と人が足りないと感じており、いかに効率的に連携していくかが今後重要になってくることが分かりました。連携機関同士の理解を深めて、お互いが必要な情報を的確にくみ取りそれを伝えることや、デジタルを上手く活用して情報の整理を行うなど、限られた時間・人を有効活用できるような工夫を考えていく必要があると分かりました。
●フォーラムを開催しての感想
ABAの考え方は、環境に原因を探して誰も悪者がでない考え方なのが親子両方にとって受け入れやすい考え方だと感じました。子どもは問題行動をしたいと思ってしていないし、それで怒られたり親が困っているのを見るのはしんどい。親もできれば問題行動が減ってほしいと思っているけど、どうしたらいいのか分からなくてただ子どもと向き合うことに精一杯。そんな親子にとって療育との出会いは、問題行動改善のための学びの場との出会いであるとともに、親子関係に一緒に向き合い、一緒に考えてくれる頼もしいパートナーとの出会いでもあるのではないかと考えました。そんな存在である支援者が、全部やってしまうのではなく、「親が家で一人でもできるように」とあくまで親子が主体であることを意識して脇役に徹して関わっていくことで、親が支援に依存したり、頼りっぱなしになるのではなく、自分たちのことであるという意識を持ち続けて通い続けられるのだと感じました。子どもにとって親は代わりのいない存在なので、親が疲弊せずに、笑って子どもと向き合っていける環境を整えることは子どもの健康な成長のために必要であると感じました。
支援者としては、一人の子のひとつの行動についてストラテジーシートを使って考える時間を作ることで、より詳しい理解ができると感じました。シートになっていると空欄を埋めていくことで行動分析ができるので、取り組みやすく、考えやすいと感じました。
パネルディスカッションでは様々な現場で、人や情報の資源不足で連携したいけれどできない、やりたいことがあるけれど現実的に実現不可能であるという困難さを感じました。人手不足解消には時間がかかるため、連携が必要な人や機関がそれぞれ必要な情報は何かを考え、効率的に連携をしていくことが求められていると感じました。 今回のフォーラムでは様々な現場で働く方が集まり話をすることで、「私だけじゃなくてみんなもその困り感を抱えていたんだ」「それって大変だよね。分かる。」と互いの苦労をねぎらい、理解し合う場になっていたようにも感じます。みんな困っていることは一緒だったんだという気づきが、連携は個人の問題ではなくみんなの問題であり、みんなで協力して解決する問題であるという考えや解決への思いにつながればいいなと思います。





