2024.4.26
ヤングケアラー
元ヤングケアラーのひとつのケースとして読んでもらえたら嬉しいです。
私(えりこ)は幼い頃に父を亡くしたため
母は朝から夜遅くまで一生懸命働いてくれていました。
小学1年生の頃から、母が仕事の間は弟の世話をしていました。弟が泣き止まず困って母のパート先に電話をしたことがあります。
“忙しいから帰ることなんてできないよ。お姉ちゃんなんだからお願いね。”
中学生のとき、再婚してステップファミリーになり年の離れた弟が生まれました。
両親は一生懸命働いてくれていました。
私は高校が終わると歩いて保育園に弟を迎えに行き、買い物をして電車で帰宅、夜ご飯を作って一緒に食べ、お風呂に入って寝かしつけをしていました。
ついつい、一緒に寝落ちしてしまうこともありました。課題が終わっていないと困るので夜中に目覚めて勉強したこともたくさんあります。
20代になって、親やきょうだいが病気になったとき、病院の付き添いや生活の介助をしていました。働いていても、急に親の調子が悪くなり病院に行ったり、何かの手続きが必要になり窓口を回ったりする必要があり、お仕事を休むこともありました。
同世代の人で、親の介助や介護で休みを取る人はあまりいないので、職場にはなかなか理解してもらえませんでした。
“迷惑をかけてごめんね。”
“大丈夫。家族なんだから。”
小さい頃から弟たちの面倒を見ていたため、面倒見がいいね、大人っぽいねと言われることがありました。
しんどいなと思うこともあったけど
家族だから助け合うのが当たり前だし
弟たちは大好きだし
親は大切だから
自分もがんばらないと!と思っていました。
ふとした時に、この生活がずっと続くのかな?と不安になったり、疲れて勉強や日常生活がうまくいかないなと焦りを感じることもありました。
でも、私にとって家族のことを誰かに話すのはとっても勇気が必要なことです。私が誰かに家族のことを話すことは、家族のプライバシーや尊厳をないがしろにしてしまう気がしていました。
なぜそう思うようになったのかを考えてみると、保育園や幼稚園、小学校低学年のとき、おしゃべり好きな私は、家庭であったことを先生になんでも話してしまってよく怒られていたからかなと思います。
“なんでも話すのはやめて。はずかしいでしょ。
周りの人になんて思われるか。”
そんな感じで話す親の顔はとても悲しそうでした。そうか、なんでもかんでも誰かにお話したらダメなのか。それは家族が悲しむことにつながることもあるんだな、と思いました。
大人になって
社会に出て
新しい家族ができて
自分は自立した一人の人間のはずなのに
いつも家族の事情を優先していて
気がついたら疲弊してしまっていました。
心身共に調子を崩してしまうことも多々ありました。
大人になって、最近ヤングケアラーという言葉が広まって、「もしかして、私ってヤングケアラーだったのかな?」とようやく気付くことができました。
そして少しずつ信頼できる人に自分の経験やしんどさを話すようになりました。
当時つらかったこと、今も続くしんどさ
答えの出ないモヤモヤ
そんなことを話すととても気持ちが楽になりました。
だから、わたしはまなびやももで出会うこどもたちに伝えています。
一人で抱え込まなくていい
つらい気持ちを口に出してもいい
休んでもいいし逃げてもいい
誰かを頼っていい
自由になってもいい
幸せになってもいい
夢をあきらめなくてもいい
自分を大切にしてもいい
今はヤングケアラーではない人も、家族の病気や障害で急にケアラーになる場合もあるかもしれません。
そんな時もまた、誰かに頼っていいんだということを思い出してもらえると嬉しいなと思います。
香川県高松市にある「まなびやもも」では、こども若者の居場所づくりや相談、学習会や体験活動などをおこなっています。不登校や発達障害、ひとり親やステップファミリー、ヤングケアラーなど多様な背景に育つこどもたちが、安心して過ごせる居場所、信頼して相談できる関係を大切にしています。
個別でゆっくりお話をしたり、楽しく遊んだり、自分のペースで過ごすことができます。
もし、あなたが(元)ヤングケアラーかもしれないと悩んでいたら、ぜひ気軽にLINEやメールをしてみてください。そしてあなたのペースでお話を聞かせてください。
もし、あなたが、(元)ヤングケアラーかもしれない子ども若者を知っていたら、こんな居場所があるよと教えてあげてください。一緒に見学や相談に付き添ってくださっても嬉しいです。
家族にバレたらどうしようと不安な人もいるかもしれません。秘密は守ります。あなたのいのちと生活が大切です。
希望に応じて市役所や専門の支援機関へおつなぎしたり、同行支援をしたりします。
元ヤングケアラーの先輩がいます。ひとりじゃないんだと思ってもらえると嬉しいです。
居場所づくりや相談をはじめ、子ども若者支援は無料で利用することができます。
(2023年2月執筆)