2025.12.10
これまでの活動について
「語られなかった痛み」の深さ
2018年からまなびやもも始め、香川県でこども若者支援を続けてきて痛感するのは、表に見える課題よりも、その下に沈んでいる「語られなかった痛み」の深さです。
不登校の相談から始まった関わりが、実は発達障害、二次障害の精神疾患、家庭内不和、親のメンタル、障害のあるきょうだいのケア、経済的困窮、境界知能など複合的な困難につながっているケースも多いです。
けれど本人がそれを誰にも言えず、自分を責め、孤立し、最後の最後で「もうしんどい」と言える場所がどこにもない――そんな若者が増えています。
まずは呼吸ができる場所になりたい
“制度につながる前の前の段階”の、ほっとしてふぅっと息ができる場所でありたいと考えています。
行政や学校、医療へつながるまでに、必要不可欠な「安心する経験」「関係性の土台」「自分を取り戻す時間」があります。そこが欠けているために制度を活かしきれず、行き場を失っていく若者たちとたくさん出会ってきました。
「本当はずっと助けてほしかった」
エピソードをひとつ紹介します。
不登校がきっかけで出会った若者。最初は「勉強が不安」という相談でした。お話を聴かせてもらうことで、発達障害の特性、二次障害、家族や周囲からの理解不足、病気や障害のあるきょうだいのケア、メンタルヘルス、家庭内ストレスなどが少しずつ明らかになりました。
複合的な背景は若者が一人で背負いきれるものではありませんでした。
相談できる場所や人がおらず、「自分が頑張らなきゃ」「自分さえ我慢すれば」と自傷行為などを繰り返し、時には入院をすることも。環境調整や家族の理解が追い付かず、ご本人の治療だけがハードになるばかり。
ご本人が「幼少期からの逆境体験(ACE)」を初めて語れたのは、出会ってから少し時間がたったあとの、ももの畳の上でした。
泣きながら「本当はずっと大人に助けてほしかった」と言った時、私は支援者ではなく“人としてそこにいる”という感覚になりました。
ももに来た日にはただ眠ったり、紅茶を飲んだり、誰かの制作を見ている日もあります。
またほかの人とお話したり、文章を書いたり、イラストを描いたり。時にはそのメッセージが読んだ人の心をあたたかくすることもあります。
それはすべて 「パーソナル・リカバリー(自分の人生を生き直す力)」 の一部です。
パーソナルリカバリー
臨床的リカバリーが「症状が安定する」だとすれば、
パーソナルリカバリーは 「夢や希望を持ち直す」「自分らしさを思い出す」 という、ご本人の気持ちを出発としてはじまる回復のプロセスです。
その方はいま、ユース新聞に文章を書き、イラストを描き、同じように苦しむ誰かへのメッセージを届けています。かつて助けを求めることが難しかった人が、誰かの希望になるという循環が生まれています。
ももは、「居場所」「学び」「相談」「アート」という形をとりながら、
実際に行っているのは “若者の人生のとなりを歩かせてもらうこと” です。
緊急支援からゆるやかな関わりまで密度を調整し、誰かが倒れかけたら支えるし、助けられながら助けることもあります。
制度や専門職だけでは埋められない“回復の土台”を丁寧にともに作っていくこと。
それがももの役割であり、7年間積み重ねてきた実践です。










アンケートから見るこども若者たちのこと
生きづらさや不登校の背景を持つ子どもたちが、日々の関わりの中で少しずつ変化していく姿が見えてきました。「安心して過ごせる」「話してもいいと思える」——そんな時間が、子どもたちにどんな影響を与えているのか。アンケートを通じて見えてきた、子どもたちの様子についてご紹介いたします。
🌟 自分を好きになれるようになった 〜自己肯定感の向上〜
かつては「自分のことを好ましく思えない」「自信が持てない」と感じていた子どもたちも、活動を通じて少しずつ変化していきました。
- 「自分にはいろいろな素質がある」と思えるようになった:31% → 69%
- 「自分のことを好ましく感じる」:19% → 62%
自分自身の存在を肯定できるようになることは、次の一歩を踏み出すための大切な力です。
📘 学びたい気持ちが芽生えている 〜学習意欲の変化〜
安心できる場所で学ぶことで、「わからないことは聞いていい」と思えるようになり、学びに前向きな姿勢が見えてきました。
- 「分からないことを質問できている」:62% → 88%
- 「復習したいと思う」:56% → 75%
- 「他人の意見を集中して聞ける」:69% → 88%
一人ひとりのペースを大事にした学びの場が、意欲の回復につながっています。
🤝 人と関わる力が育ってきた 〜他者との関係性〜
最初は人との関わりに不安を感じていた子どもたちも、少しずつ人との対話を望むようになりました。
- 「自分の考えを聞いてほしい」:56% → 88%
- 「悩みを人に話したい」:56% → 75%
- 「迷っているときに人に相談したい」:57% → 93%
対話を通じて、「話してもいい」「聞いてもらえる」という実感が育っています。
💓 安心感とつながりの回復 〜精神的安定〜
- 「必要とされていると感じる」:14% → 36%
- 「仲間付き合いがあると感じる」:43% → 79%
- 「自分を肯定する機会がある」:21% → 57%
孤立していた子どもが、少しずつ「ここにいてもいい」と思えるようになる。そんな変化を日々感じています。
🔍 興味関心の広がり 〜挑戦したい気持ち〜
- 「楽しかった・やってよかったと思える機会がある」:50% → 93%
- 「新しいことに挑戦するのが好き」:21% → 57%
- 「新しいアイディアを考えることがある」:36% → 64%
小さな体験や出会いをきっかけに、閉じていた関心の扉が少しずつ開かれています。
🎓 将来へのまなざし 〜未来を思い描く〜
- 「将来のために準備していることがある」:14% → 36%
- 「進級・進学・就労などを考える機会が増えた」:36% → 79%
- 「自立に向けた支援の選択肢が増えたと思う」:21% → 64%
将来について考える余裕や選択肢が生まれることで、「未来に希望が持てるようになった」と話す子どももいます。
✨一つひとつの変化が、次の可能性につながっていると実感しています。
今回のアンケートから見えてきたのは、、「自分を信じられるようになった」「人に相談してもいいと思えるようになった」——そんな一歩一歩進んでいることです。
これからも、子ども・若者が安心して過ごし、自分らしさを取り戻していける場所であり続けたいと願っています。



