2024.9.1
【開催報告】6月29日(土)「ももフォーラム」を開催しました
2024年6月29日(土)に「ももフォーラム」を開催いたしました!
当日は、行政職の方をはじめ、学校の先生、教育関係者、NPO法人で子どもたちにかかわる方、教育に携わろうと考えている学生、ももを支えてくださる多くの方が、ご来場されました。「多様性と創造性」を軸に、子ども・若者たちの声を聴き、どんな未来を作っていくのかということを考える機会になりました。
基調講演やパネルディスカッション内では、「どうやって子どもの声を行政に届けるのか」という問いについて、明確な答えを出すことができなかったけど、それを一生懸命に考える人がいる!、というのと、子どもたちの声を届けられる可能性を秘めているのは、ユースワーカーの皆さんではないか?という認識が生まれた会でもありました。
◆活動報告
代表理事の伊澤貴大より、開会のご挨拶をさせていただき、その後、事業報告をさせていただきました。
◆基調講演:能島祐介さん
能島さんには、「こども若者の権利から考えるまちづくり~尼崎市の取り組みから~」というテーマでお話をしていただきました。
能島さんは、学生時代からボランティアとして学習支援やキャンプ等のレクレーション活動などを展開され、大学卒業後就職を経た後にNPO法人を設立されました。青少年を対象とした学習支援、不登校支援、生活困窮者支援活動等のご経験を活かし、現在では尼崎市子ども政策監に就任され、活躍されています。
尼崎市では、前稲村和美市長の市民自治という考えが、市の政策に反映されてきました。「こども若者の権利から考えるまちづくり」はその中の重要な政策です。こども若者の権利の中でも特に、「こども若者の意見表明の保障」が重要であるとし、尼崎市ではそのための取り組みが様々に行われてきました。
今回の講演では、「こども若者の権利」を支える枠組みである子どもの権利条約とこども基本法についての確認ののち、「こども若者の意見表明の保障」に重点をおかれ、それがなぜ重要であるのかについてその背景にある思いなどを含めてお話になりました。また尼崎市での実際の取り組みの現状と課題についてお話をされました。以下において能島さんのお話の内容をまとめさせていただきます。
能島さんのお話の中でまず重要であることは、子どもの意見表明の保障があげられます。子どもの意見表明権を保障するためには、子どものことは「子ども自身に意見を聞くこと」が重要であることが強調されていました。大人が勝手に子どもの気もちを忖度したり、「子どものためを思って」判断したりするのではなく、子ども自身の声を聞くことが重要であるということです。
「こども若者の意見表明の保障」がなぜ重要なのか、その理由としては、大きく2点挙げられていました。第一には、将来の市民(主権者)を生み出すことにつながることです。主体的に考え、決定し、行動することができる主権者を育てるためには、青年期に自分が考え、声を上げ、行動すれば社会が変わる、あるいは自分の声を聴いてもらえるという経験をすることが重要であると主張されていました。これは「自分が動いても社会は変わらない」という考えが存在する要因として「言っても無駄」「言っても変わらない」という繰り返しで学習性無力感を経験することなどを挙げ、それを打破することで、主体的な市民(主権者)を育てることができるという考えです。第二には、真に効果のある政策を生み出すことにつながることです。特に若者向けの政策を行う際には若者自身の声を聞くことによってその政策効果を高めることができると述べられていました。
上記のような「子ども若者の意見表明の保障」の捉え方、考え方の下に尼崎市では若者の意見を政策に反映するための取り組みが行われてきました。
講演のまとめ
○取り組みの現状と課題・これからの取り組み
○ユースワーカーの役割・実はユースワーカーなひとがたくさんいる
○子どもの意見を聞くことは難しい・赤ちゃんの声を聞くには?・わからないことはまだまだたくさんある・みんなでアイディアを出してより良くしていきたい
◆パネルディスカッション
・モデレーター
山内幸治さん(NPO法人ETIC. シニア・コーディネーター / Co-Founder/認定NPO法人カタリバ理事)
・パネリスト
能島祐介さん(尼崎市こども政策監/尼崎市教育委員会事務局参与)
藤川盛司さん(高松市政策局政策課地域活力推進室)
熊田知香さん(高松市教育委員会 高松市総合教育センター)
真鍋康正さん(ことでんグループ代表)
伊澤貴大(一般社団法人もも代表)
(パネルディスカッション一部抜粋)
山内さん)命をまもるための「協働」、参画を促すための「協働」どちらなのか、整理しながら進めたい。
Q. 今抱えている課題。協働に向けての問題意識
熊田さん)2年前まで中学校の教育現場にいた。「社会に出たら通用しない」と生徒に言っていたが、「社会」を理解しての発言だったのか?と振り返って思う。こうしたゆがみが不登校を生んでいたのではないかと考えている。「にじ」や「みなみ」につながれていない子どももきっとたくさんいる。社会が様々な形で学校とつながろうとしている。自分もどうつなげていけるか?が課題
藤川さん)福祉の現場では課題が複雑化している。行政だけでは解決しきれない(ヤングケアラー、8050問題)。高松市としては、SOSを出せない人に対して「まるごと福祉相談員」を置いている(市内に15名)。電気がついていない家に戸別訪問するなど、親子のコミュニケーションに介入するなど、必要に応じて行っている。地域の人との協働も重要だと思っている。地縁が薄くなっているが、そこにセーフティネットを張るような組織があるといいと考えている。
山内さん)アウトリーチは大事な入口の一つ。行政だけ/民間だけでは限界がある
Q. アウトリーチの具体、協働における課題がどこにあるか、ここまでの話を聞いての所感
能島さん)必要な人に必要な支援を届けられているか?ということが行政の課題。不登校を例にすると、中学校卒業までしかカバーできない。高校世代以降の不登校・引きこもりに行政は手を出せない。年齢による区分をどう乗り越えるか?尼崎市では、中学校卒業以降の不登校支援もさせてもらえるよう中学校(生徒の在学中)に同意を取っている。NPOに委託しながら卒業後の支援を行っている。
Q. 行政の役割をどう捉えているか。問題意識と工夫
藤川さん)福祉の現場では課題が複雑化している。行政だけでは解決しきれない(ヤングケアラー、8050問題)。高松市としては、SOSを出せない人に対して「まるごと福祉相談員」を置いている(市内に15名)。電気がついていない家に戸別訪問するなど、親子のコミュニケーションに介入するなど、必要に応じて行っている。地域の人との協働も重要だと思っている。地縁が薄くなっているが、そこにセーフティネットを張るような組織があるといいと考えている。
Q. 情報共有の壁もあるだろう。尼崎ではどうしているのか
能島さん)中学校在学中であれば本人から同意を取れる。本人の同意が得られない情報もたくさんある。それらを民間にどう共有するかは尼崎市でも課題となっている。要対協の枠組みを使いながら民間に情報共有をしようと試みている。
Q. 多様なニーズがある中で、企業が参画しているいい取り組みはあるか(尼崎市内外)
能島さん)尼崎市内にスケボーパークをつくろうというクラウドファンディングを実施。1,000万円寄付した企業がいた。地域の大人が応援しているという姿勢を若者に示すことが大事だと考えたことが背景にある。
山内さん)北海道浦幌町では、中学生がやりたいことを大人がやるという取り組みをずっとやってきた。そのため、浦幌町の子どもは地域愛が高くUターンする人も多い。ただ、仕事が少ないことが課題。蕎麦屋を継ぐケースもあった。多様な場を作ることは民間の得意分野だろう。
Q. 民間企業から見たときの若者支援で考えていること、できそうなこと
真鍋さん)不登校、引きこもり、家庭の問題は企業の人からは見えない。行政の領域だし踏み込めないと思っている。地域社会の中では進行していて、地域を弱体化させているだろう。経営者が民間×行政の協働にどう入り込めるのかはまだ課題を感じている。……中央公園はスケボーのメッカだった。住民が増えている中で騒がしいことをしづらくなっている。「スケボー禁止」という雰囲気になっている。尼崎市の取り組みは興味深い。スケボーは若者しかやらないスポーツのため排除しづらい。
Q. 不登校=悪いこと、という前提が変わり始めている。不登校をポジティブにしようとする流れもあるが、学校復帰以外の選択肢も提示しているのか。
熊田さん)学校が合わないからほかの選択肢を選ぶ、という子もいる。やりたいことを実現したいというパワーのある子もたくさんいる。いま関わる子どもの大部分は、そのパワーが少ない。自己肯定感・自己有用感をはぐくむ必要がある。
伊澤)社会的に弱い立場の子に目線が行っているが、その子たちもまた別の誰かに目線が行っている。誰に目線が行っているのか?を事実と感情に分けて整理している(親であることが多い)。そういった子どもたちの声を拾い、適宜先生や保護者に共有する。一方で、ため込む子も多い。ため込んだ子どもの変化に気づけるにはセンスが必要で、絵理子から学んでいる。
感想:全体を通して、「子どもの声を聴く」ことの重要性を感じることができました。困っているけれど行政・福祉施設とつながりがない人も多いため、様々な機関が協力して必要な人に必要な支援をするための取り組みをしていくことが大切だと感じました。また、その子の困り感だけを聞くのではなく、やりたいことも聞いて、それを一緒に実現させることで自信をつけるということも大切だと感じました。
ご来場いただき誠にありがとうございました。また、日頃より当団体に関わってくださっている皆さまには、改めて心からお礼申し上げます。今後も、ご支援ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。